永井荷風は明治の東京で生れ教育を受け、留学も経験、慶應義塾大学文学部の教授もしながら小説を書いた作家です。
ニューヨークやパリで過ごし、浅草の花柳界、銀座のモボモガカフェーに身を置いた、当時は並ぶもののないほど超おしゃれな作家の書く文章は、粋で軽やかで、それからけっこうナマナマしいです。
「にぎり飯」は、昭和20年3/10の東京大空襲、猛火を生き延びた二人の男女が、炊き出しのおにぎりを一緒に食べたことから始まる物語です。
どんな環境でも、男と女がいる限り、こういうことが起こるんだなあと…。
私としては、「ホッとする」物語です。
生きようと懸命になることが未来を運んでくるのかもしれません。
それは千代子と佐藤だけじゃなくて、パンパン屋になった元彼にとっても言えることなんだろうなあと…。
写真は、文化勲章を祝った、浅草ロック座というストリップ劇場の踊り子たちとのショット。
荷風先生、戦後はここの楽屋に入り浸っていたそうですよ。